イラククルド自治政府 滞在報告(3)

農業大臣との会見

【7月31日】農業大臣との会見

以前から協議を続けてきたクルドにおける農業関連施設建設計画について協議した。

日本政府が行うODAではなく日本の民間企業に進出して欲しいとの要望であったが、季候も違いどの場所を提携供していただけるか、判らないので先ずクルド自治政府は何が必要であるかを知る為、計画プログラムを頂いた。

前回のクルド訪問後、我々はクルドの食文化として鶏肉を多く食するので養鶏場建設の提案をしようとしたが、日本から資材を運び建設するのはコスト面で採算が合わないと報告をしていた。それらのことは、大臣には通じていなかった。

クルドは、発展途上であり、人口も増加しているので、自給率を上げる努力が必要である。政府は国民の世帯数に合わせ支給負担をしている以上民間で農場経営を拡大する必要はあるが、同時に水源確保も必要であり、ダム建設も急がれる。

いずれにしても日本から提供できるものは、食品衛生管理などの技術提供ではないかと考える。このためにはクルドの民間企業と提携し、クルド政府に提案することが最良の方法である。

クルド日本友好協会事務所にて

建設副大臣との会見

クルド日本友好協会メンバーと

【7月31日】建設副大臣との会見

建設省では、道路インフラや住居に関する建設開発を行っている。クルド自治政府内におけるインフラを進めており「日本の建設技術は優れており是非日本企業にも入札に参加して欲しい。事業計画は、もし進出していただける企業があるなら喜んで提供する」と述べた。

クルドでは開発が急ピッチに進められているので早くクルドに進出してくれることを望むとの談話であった。これに加え、JAICAとの関係ではなく民間レベルで日本の建設現場の視察を行いたいとの申し入れがあった。「我々は、日本の技術を高く評価しており日本国民や日本政府、日本企業に、交流を深めたいと考えていることを是非伝えて欲しい」とのことであった。又今回の大震災のお見舞いを日本政府、被災者の方々に伝えて欲しいと言われた。

参考としてクルドにおける開発事業は、民間に委託されるそれぞれの計画に応じ、資料請求費用が係るが様々な事業計画を見て、それぞれの企業が自社に応じた計画の資料を買取る。一度それを買い取ればその企業が公共事業を請け負うことが出来る。

【8月1日】
各省庁の予算を管轄する計画省の副大臣と会見し、留学生に対する予算等を協議

【8月1日】計画省副大臣との会見

計画省は、日本における財務省と同じく各省庁の年度計画を受け予算の執行をする機関である。

本年度、拓殖大学では留学生を受け入れる準備が整っていた。しかし実現できなかったことを説明すると、文部省からは「予算の申請が無かったので、再度詳細を提示して欲しい」との要望があり、昨年クルド友好協会に提示した予算書を再度、日本友好協会及びクルド友好協会の連名で提出した。

クルド自治政府では、政府職員及び優秀な学生を選び、短期・長期に分けて1000人ほど欧米へ留学をさせているとのことであった。秘書の方もJAICAの企画で、短期日本研修を行ったとのことである。日本でも、各省庁が政府の予算で海外の大学に留学させているので、是非日本にも留学させて欲しいとお願いされた。但し日本は、生活費等の物価も高く、民間人が留学するには日本語研修360時間、若しくは日本語検定3級以上の資格が無いと文部省が認める留学資格が認定されないだけではなく、法務省の在留許可申請、外務省の査証申請などの手間がかかる旨を伝えた。また、「拓殖大学では貴国の重要性を考え、各手続の特別プログラムを組んで頂いていました。また、将来日本への留学生の為と日本企業との研修や、日本との交易の為にも高校に日本語科目の選択を創設する事が望ましい」と述べると、早速、中学、高校担当の文部大臣と会い説明してくれとのことであった。

最後に大震災のお見舞いを述べられ、日本国民は戦後、世界のトップまで上りつめる経済発展をする為の努力をしてきたので、被災地も必ず復興するだろうと日本国民に対し励ましの言葉を頂いた。

【8月2日】
文部大臣との会見

【8月2日】文部大臣との会見

計画省副大臣の要請により日本への留学の手続きについての説明を行い「日本では英語で授業を行う大学が少ないため、日本語で授業を受けなければならない。その為には日本へ留学する為には、日本語を学ぶ必要があり、今後の為にも、日本語の選択科目を創設して欲しい」との要望をした。拓殖大学では、既に留学生の受け入れができていることを述べた。計画副大臣は、日本の大学若しくは専門学校を卒業してクルドに帰国し、クルド政府に役立つ人材を育てたいと申されていたので、その旨も伝えた。

文部大臣は、留学する先の母国語を学ぶことは当然であり、その国の文化を知る為にも必要であると述べられた。長い間難民として、母国語を使用できず且つ他国の中では、母国の風習や伝統、言語の使用を禁じられてきたこともあって、他国の文化や伝統を尊重する態度は、悲哀の歴史から自主独立し民主化されたクルド自治政府ならでのことであると感じた。

会話の中で「教育は、知育、徳育、体育、が三原則とされている。生活する上で必要な識字や、計算力が基礎となり、様々な知識を身につける知育、国民が共同生活するうえで必要な良識や尊厳を学ぶ徳育、知育で身につけたその知識を徳育によって生かし、体育によって心身を鍛え健康な身体を作り、国家に貢献できる人材を育てる。これ以上に、愛国心を育てることが必要であります。残念ながら、現在の日本では、愛国心を育む教育が疎かになっています。自分の国を愛せないものが大小関係なく、他国に対し敬意を以って接することなど出来ません。貴国は、日本の技術や、戦後復興の精神を学びたいとおっしゃるが政府、国民が一丸となって、国創りをしていることを見ると、逆に今の日本人は、貴方方を学ぶ必要があります」と伝えた。

大臣は「最も重要なことは愛国心を育むことだ。愛国心は貴方が言うように、知育、徳育、体育の元である。我々もその教育を重要と考えている。今後日本との交流を期待する。民間の貴方方の活動が、クルド、日本両政府の架け橋となり、必ず良い結果が出ると考えますので、今後も協力し合おう」と述べられた。

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